「勉強したくない」は、やる気がないだけではありません

こんにちは。S塾長です。

「うちの子は勉強しない」

「何度言っても勉強を始めない」

「勉強しなさいと言うと、すぐに嫌がる」

中学生のお子さまを持つ保護者の方から、このようなご相談を受けることがあります。

このとき、単純に「やる気がない」と考えてしまうのは、少し注意が必要です。

実際には、

  • 勉強してもできない
  • 何を勉強すればよいかわからない
  • 勉強する意味がわからない
  • 親や先生から「やらされる」のが嫌
  • 勉強以前に疲れている

など、さまざまな理由が考えられます。

教育心理学の「自己決定理論」では、学習への自律的な動機づけには、**自分で選べる感覚(自律性)・できるようになっている感覚(有能感)・周囲との良い関係(関係性)**が関係するとされており、特に「有能感」との関連が強く示されています。

では、「勉強したくない」という生徒に、どのように接すればよいのでしょうか。

まず「なぜ勉強したくないのか」を考える

「勉強したくない」という言葉だけでは、本当の原因はわかりません。

例えば、次のようなタイプが考えられます。

生徒の状態考えられる対応
問題が解けない大幅に易しい問題から始める
何をすればよいかわからない「今日はこれをやろう」と具体化する
「どうせ無理」と思っている小さな成功を積み重ねる
勉強する意味がわからない本人の目標と勉強を結び付ける
指示されると反発するできる範囲で選択肢を与える
疲れている学習時間や量を調整する
勉強以外に興味がある無理に興味を変えようとしない

同じ「勉強したくない」という言葉でも、原因が違えば対応も変わります。

だからこそ、まず「なぜ勉強したくないのか」を考えることが大切です。

特に注意したいのが「できないからやりたくない」

例えば数学で、20問出して3問しか正解できない生徒がいたとします。

その生徒に、

「もっと勉強しなさい」

と言うだけでは、なかなか状況は変わりません。

むしろ、

20問中3問しかできない
↓
10問中8問できるレベルまで戻る
↓
「できた」
↓
少しだけ難しい問題に挑戦する
↓
「これもできた」

という順番が重要になる場合があります。

「自分はできる」という感覚が少しずつ生まれることで、次の学習に取り組みやすくなります。

これは「有能感」と呼ばれる感覚です。

研究でも、有能感は自律的な学習動機づけと特に強く関連する要因として示されています。

「勉強しなさい」を少し減らしてみる

家庭では、つい、

「勉強しなさい」

「中3なんだから勉強しないと」

と言いたくなります。

もちろん、勉強する必要があることを伝えるのは大切です。

ただし、毎回すべてを指示するのではなく、本人が選べる部分を作る方法もあります。

例えば、

「英語と数学、今日はどっちからやる?」

という聞き方です。

「勉強するかどうか」は選択させません。

しかし、

「何からやるか」は本人に選ばせる。

これだけでも、自分で決めているという感覚を持ちやすくなります。

ただし、何でも自由にすればよいということではありません。

「今日はこの2つをやろう。そのうち、どちらから始める?」

というように、大人が枠組みを作り、その中で本人に選択してもらうことがポイントです。

自己決定理論でも、自律性を支える環境は学習への自律的な動機づけと関連するとされています。

「何のために勉強するの?」にも答える

中学生から、

「数学って何のために勉強するの?」

と聞かれることがあります。

このとき、

「将来必要だから」

だけでは納得できないこともあります。

大切なのは、今やっている勉強と本人の目的をつなげることです。

例えば、

「この高校に行きたいなら、今の数学の点数をあと10点上げたい。そのために、まずこの単元をできるようにしよう。」

という説明です。

「勉強は大切」と抽象的に伝えるだけではなく、

今の勉強 → 今の目標

というつながりを見せることで、「何のためにやっているのか」を理解しやすくなります。

成功体験は「小さくていい」

「次のテストで80点を取ろう」

という目標が、すべての生徒に適しているとは限りません。

今30点の生徒にとっては、80点という目標が遠すぎることもあります。

その場合は、

「今日は正負の数を10問やって8問正解する」

くらいの目標でも構いません。

そして達成できたら、

「前は3問しかできなかったけど、今日は8問できたね。」

と伝えます。

ここで大切なのは、他の生徒と比較するのではなく、以前の本人と比較することです。

「○○さんはもっとできている」ではなく、

「前よりできるようになった」

という変化を本人に気付かせます。

「やる気が出てから勉強する」とは限らない

勉強について、

やる気が出る
→ 勉強する
→ できるようになる

と考えがちです。

しかし、実際には、

少し勉強する
→ 少しできる
→ 「できるかも」と思う
→ もう少しやってみる
→ さらにできる

という順番になることもあります。

だからこそ、最初から「やる気」を大きく引き出そうとする必要はありません。

まずは、「これならできそう」と思えるところから始めることが大切です。

塾では「やる気を出させる」より「やれる状態を作る」

学習塾の役割も、単純に「生徒のやる気を出させること」ではないと考えています。

例えば授業の最初に、いきなり難しい問題を大量に解かせるのではなく、

① 最初は簡単な問題から始める

「これならできる」という問題を2~3問解く。

② できたことを確認する

「これはできているね」と、具体的に伝える。

③ 少しだけ難しくする

簡単すぎる問題だけで終わらせず、次の段階へ進む。

④ 今日できるようになったことを確認する

「今日は一次方程式を10問解いて、8問できたね。」

⑤ 次回につなげる

「次は文章題を1問やってみよう。」

このように、一度に大きく変えようとせず、「わからない」から「わかる」、「わかる」から「できる」へ進めていくことが重要なのです。

「勉強好き」にする必要はありません

最後に、保護者の方にお伝えしたいことがあります。

子どもの目標を、

「勉強を好きにする」

と考えなくてもよいのではないでしょうか。

勉強が好きではなくても、

「勉強は好きじゃない。でも、やれば少しずつできるようになる。」

と思えるようになれば、大きな変化です。

最終的には、

必要なときに、自分で勉強できる。

という状態を目指すことが大切です。

そのためには、

「やる気を与える」よりも、「わからない→わかる→できる→自分でもやれる」という循環を作る。

「勉強したくない」と言ったときには、まず「この子はなぜ勉強したくないのだろう?」と考えてみる。

そこから原因に合った方法を考えることが、勉強への第一歩になるのではないでしょうか。

ぜひ参考にしてみてください。

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