「学校の勉強って、将来何の役に立つの?」
子どもたちから、こんな質問をされることがあります。
特に中学生になると、数学の方程式や英語の文法、理科の実験、社会の歴史などを勉強しながら、
「こんなことを覚えて、本当に将来使うの?」
と疑問に感じることもあるでしょう。
しかし、学校の勉強の目的は、単にテストで良い点を取ることだけではありません。
文部科学省の学習指導要領では、学校教育を通して育てたい「生きる力」を、知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等という3つの柱から整理しています。
つまり、学校の勉強と「生きる力」は、実は深くつながっているのです。
そもそも「生きる力」とは何か
「生きる力」という言葉を聞くと、
「困難に負けない精神力」
「社会で生きていくためのコミュニケーション能力」
などをイメージするかもしれません。
文部科学省では、「生きる力」を、確かな学力・豊かな人間性・健康や体力を総合した力として捉えています。
現在の学習指導要領では、これを各教科の学習を通して育てる資質・能力として、次の3つの柱に整理しています。
① 知識及び技能
「知っている」「できる」という力です。
例えば、
- 漢字を読める
- 英単語の意味が分かる
- 数学の公式を使える
- 歴史上の出来事を知っている
- 理科の基本的な仕組みを理解している
といったものです。
② 思考力・判断力・表現力等
知識を持っているだけではなく、それを使って考える力です。
例えば、
「この問題をどう解けばよいか」
「この資料から何が分かるか」
「自分の意見をどう説明すれば相手に伝わるか」
といった力です。
③ 学びに向かう力・人間性等
自分から学ぼうとしたり、学んだことを社会や人生に生かそうとしたりする力です。
文部科学省は、この中に主体的に学習に取り組む態度だけでなく、感情や行動を調整する力や、よりよい生活・人間関係を形成する態度なども含めています。
この3つは、別々のものではありません。
知識を身につけ、それを使って考え、学んだことを自分の人生や社会に生かしていく。
これが「生きる力」と学校の勉強のつながりです。
「勉強=暗記」ではない
学校の勉強というと、
「覚えること」
だと思っている人もいるでしょう。
もちろん、知識を覚えることは重要です。
例えば、英語の単語を知らなければ英文を読むことはできません。
数学の基本的な計算方法を知らなければ、複雑な問題を解くことはできません。
歴史的な出来事を知らなければ、社会の変化について考えることも難しくなります。
つまり、
知識は「考えるための材料」
なのです。
文部科学省も、現在の学習指導要領における「知識」について、単なる個別の事実を覚えるだけではなく、既に持っている知識や経験と新しい知識を結びつけ、さまざまな場面で活用できるものとして捉えています。
「覚えたら終わり」ではありません。
覚えた知識を使えるようにすることが大切なのです。
数学は「答え」を出すためだけの教科ではない
例えば数学を考えてみましょう。
方程式を解く。
図形の面積を求める。
関数のグラフを読み取る。
これらは、一見すると学校を卒業した後には使わないように思えるかもしれません。
しかし、数学の学習では、
「条件を整理する」
「必要な情報を見つける」
「解決方法を考える」
「計算する」
「答えが正しいか確認する」
という一連の活動を行います。
これは、日常生活や社会で問題を解決するときにも必要になる考え方です。
もちろん、社会に出てから誰もが学校で習った方程式をそのまま使うわけではありません。
大切なのは、
数学を学ぶ過程で、問題を整理して解決する方法を身につけること
なのです。
国語は「日本語を学ぶ教科」だけではない
国語についても同じことが言えます。
文章を読む。
筆者の主張を見つける。
資料を読み取る。
自分の考えを文章にする。
これらは、社会生活でも非常に重要です。
例えば将来、
「契約書を読む」
「仕事の説明を理解する」
「相手にメールを書く」
「資料を読んで判断する」
といった場面が出てきます。
そのとき必要になるのが、
文章を正確に読み、内容を整理し、自分の考えを相手に伝える力
です。
国語の学習は、こうした力の基礎をつくっています。
理科や社会も「知識を覚えるだけ」ではない
理科では、
「なぜこの現象が起こるのか」
を考えます。
社会では、
「なぜこの社会問題が起きているのか」
「複数の資料から何が読み取れるのか」
を考えます。
つまり、どの教科にも、
知識を身につける → 知識を使う → 考える → 判断する
という学習があります。
文部科学省が示す「資質・能力の三つの柱」は、特定の教科だけのものではなく、各教科等の学習を通して育成することが求められています。
「勉強ができる」と「生きる力」は別物ではない
もちろん、テストの点数だけで「生きる力」を測ることはできません。
テストで高得点を取ったからといって、それだけで社会で必要な力をすべて身につけているとは言えません。
しかし、
「学校の勉強」と「生きる力」はまったく別物
と考えるのも違います。
例えば、
「分からない問題が出た」
↓
「何が分からないのかを整理する」
↓
「教科書や資料を調べる」
↓
「先生に質問する」
↓
「もう一度考える」
↓
「解決する」
という学習そのものが、問題解決の練習になっています。
「学ぶ力」は将来も使い続ける
社会に出ると、学校では習っていない問題に出会うことがあります。
新しい仕事。
新しい技術。
新しいルール。
初めて経験する問題。
そのとき、
「学校で習っていないから分かりません」
だけでは対応できません。
必要になるのは、
「分からないことを調べる」
「必要な知識を身につける」
「情報を比較する」
「自分で考える」
「必要なら人に相談する」
という力です。
だからこそ、学校教育では「何を知っているか」だけでなく、「知っていることをどう使うか」や「学びに向かう力」も重視されています。
塾での勉強も「生きる力」につながる
これは学習塾での勉強にも当てはまります。
塾では、
「この問題の答えは○○です」
と教えるだけではなく、
「なぜそうなるのか」
「どこで間違えたのか」
「別の解き方はないか」
を一緒に考えることが重要です。
また、
「今日は何を勉強するのか」
「どこまで終わらせるのか」
「間違えた問題をいつ復習するのか」
を自分で考えることも、学びに向かう力につながります。
つまり、塾での学習も、
「答えだけを書く場所」から「自分で学ぶ方法を身につける場所」へ
変えていくことができます。
保護者の方に知っていただきたい「勉強する意味」
子どもから、
「こんな勉強、将来使わないよ」
と言われたら、ぜひ一度、
「確かに、そのまま使うとは限らないね。でも、その勉強を通して何を身につけているんだろう?」
と問いかけてみてください。
例えば数学なら、
「問題を整理する力」
国語なら、
「文章を正確に理解して伝える力」
社会なら、
「世の中の仕組みを知り、情報をもとに考える力」
理科なら、
「現象を観察し、理由を考える力」
というように考えることができます。
こう考えると、学校の勉強の見え方が少し変わってくるのではないでしょうか。
まとめ――学校の勉強は「将来のための練習」である
学校の勉強は、単に高校入試や大学入試に合格するためだけのものではありません。
もちろん、受験で必要な知識を身につけることは重要です。
しかし、その先には、
知識を身につける。
↓
その知識を使って考える。
↓
問題を解決する。
↓
自分の考えを人に伝える。
↓
新しいことを学び続ける。
という力を育てる目的があります。
これこそが、学校教育が目指す「生きる力」と深く関係しています。
文部科学省も、現在の学習指導要領において、各教科の学習を通して「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の3つの柱を育成することを示しています。
だからこそ、子どもたちには、
「テストのために勉強する」
だけではなく、
「将来、自分で考えて生きていくために勉強する」
という視点も持ってほしいと思います。
学習塾としても、目の前のテストの点数を上げることだけを目的とするのではなく、「自分で考え、自分で学び、問題を解決できる生徒」を育てることを大切にしていきたいと考えています。
参考資料
- 文部科学省「学習指導要領『生きる力』」
- 文部科学省「確かな学力」
- 文部科学省「育成を目指す資質・能力と個別最適な学び・協働的な学び」
- 文部科学省「教育課程の実施と学習評価」

